着床前診断後、妊娠・出産した場合、母体や胎児の予後はどうなのか

着床前診断

着床前診断後に正常胚を移植し、妊娠・出産された胎児の、その後の経過はどうなのか調べてみました。

わたし自身、染色体の構造異常を持っているので、今後の治療は着床前診断一択なので気になっていました。

海外の論文や、わたしが説明会に参加してもらった資料を参考にまとめました。

説明会での資料に書かれていたこと

説明会・セミナーのイラスト

下の内容は、浅田レディースクリニックでの着床前診断の説明会でもらった資料に書かれていたものです。

<着床前診断PGT-Aと先天異常、その後の経過>

・海外の報告では、先天異常の頻度は通常の体外受精による出産と同じ。

・4歳のときの発達、5~6歳のときの心理社会因子について調べた調査では、着床前診断を受けたことによる影響はありません。

・長期的な経過観察の結果はまだ十分に分かっていません。

まだ長期的な調査が行われておらず、今後の発表に期待するといった内容でした。

着床前診断を実際やっているものとしては、胎児の予後はすごく気になりますが、やはりまだまだ分からないんですね。

着床前診断では、正常胚の一部(栄養外胚葉)をとって、それを解析するので、どうしても胚に傷がついたり、再凍結を繰り返すことにより胚へ負担がかかります。

その操作をすることによって、産まれるまでや、産まれた後、胎児・新生児にどのような影響があるのか気になります。

そこで、海外の研究や調査について、自分なりに調べてみました。

「周産期予後について」海外の文献、調査によると

研究・科学実験のイラスト(男性)

妊娠中や出産後に、母体や胎児・新生児に起こる、合併症の程度(レベル)のことを、「周産期予後」といいます。

着床前診断(PGT)を行ったことにより、周産期予後にどんな変化が起こるか、調べてみました。

Heらの1721名の報告

Neonatal outcomes of live births after blastocyst biopsy in preimplantation genetic testing cycles: a follow-up of 1,721 children
Fertil Steril. 2019 Jul;112(1):82-88. doi: 10.1016/j.fertnstert.2019.03.006. Epub 2019

この研究は、
PGTで胚盤胞生検後に、出生した新生児のその後の経過を調べたものです。

PGT患者グループと、PGTを行っていない体外受精移植グループで調査しています。

<この論文から分かること>

・PGTを行うことで、在胎週数、出生体重、早産率、低出生体重、巨人児の割合に、差はない

・PGTグループの帝王切開率は増加した。

PGTの胚盤胞生検は、新生児の予後(経過)にリスクを与えない可能性。

Zhangらの357名の報告

Maternal and neonatal outcomes associated with trophectoderm biopsy
Fertil Steril. 2019 Aug;112(2):283-290.e2.

この研究は、
PGTによる胚盤胞生検後、母体と新生児に、その後のリスクがあるか調べたものです。

PGTを行ったIVF177人と、PGT行っていないIVF180人の妊娠・出産という、357人の調査です。

<この論文から分かること>

・ PGT妊娠の子癇前症(しかんぜんしょう)*のリスクが増加

・前置胎盤のリスクが増加

・在胎週数や早産率、低出生体重、新生児集中治療室への入院、新生児の罹患率、出生障害に有意差はなかった。

妊娠高血圧症や子癇前症、前置胎盤が増える。
が、PGT生検による胎児への影響はなさそう。

*子癇前症妊娠中に高血圧やタンパク尿が起こる疾患。
重い疾患には赤血球の破壊、血小板減少症、肝機能障害、腎機能障害、浮腫、肺水腫など。
子癇前症は、母体と赤ちゃんの両方のリスクを増加させる。

今までのPGT研究や、その後の経過についてまとめた論文

Preimplantation Genetic Testing: Where We Are Today
Int J Mol Sci. 2020 Jun; 21(12): 4381.

PGT技術や操作方法、有用性、現在のPGTの特徴、モザイク胚、正常胚/モザイク胚移植の戦略、母体と新生児の予後などについてくわしく書かれています。

<この論文から分かること>

・PGTを行ったその後の経過は、母体・新生児ともに問題ないというデータが多い。

が、まだまだデータ不足。より多くの研究が必要。

やはり、まだまだ分からないということですね。

調査によると、胚盤胞の生検による、妊娠・出産・新生児への影響は少ないと思われるが、十分には分かっていません、ということかな。

帝王切開や前置胎盤・高血圧症、タンパク尿など、母体や出産にリスクがあるというデータもありました。

本来、出産にリスクはつきものですが、PGT生検によるリスクも少なからずあるということが分かりました。

わたし自身、着床前診断のリスクは十分分かった上で治療を行いましたが、妊娠後の経過や出産後のリスクも今一度、考えるキッカケになりました。

日本でも今回の着床前診断の研究で、たくさんのデータが集まれば、今後受ける方にとても役立つと思います。

着床前診断の導入が遅れている日本。

一日でも早く、医療として受けられる日が来ることを願っています。

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