着床前診断とは
着床前診断(PGT: Preimplantation Genetic Testing)とは、受精卵の細胞の一部を取り出して、染色体や遺伝子の検査を行い、正常の可能性が高い胚だけを、子宮に戻し育てる方法です。
この着床前診断については、命の選別ではないかという批判も多くあります。生まれてくる命を自然に任せるのではなく、病気や障害を持つ胚を選んで廃棄する行為だからです。外国では不妊治療のひとつの手段として当たり前に行われていますが、日本では今だハードルの高い治療法です。
着床前診断とよく似た名前の「出生前診断」というのは、妊娠初期に胎児の異常を調べる検査です。妊娠前に行うものが「着床前診断」、妊娠後に行うものが「出生前診断」です。
着床前診断の種類
着床前診断は、検査の目的によって3つに分かれています。
①PGT-SR (Structural Rearrangements)=着床前染色体構造異常検査
染色体の構造変化(転座など)による流産を2回以上繰り返している方を対象に、染色体異常の可能性が低い胚を選択し、移植する方法です。
②PGT-M (Monogenic)=単一遺伝子疾患に対する着床前診断
重篤な遺伝子疾患の胎児を妊娠する可能性のある夫婦を対象に、疾患が発症しない胚を選択して移植する方法です。重篤な遺伝子疾患とは、筋ジストロフィーなどの重い障害が伴うものが含まれます。
③PGT-A (Aneuploidies)=着床前胚染色体異数性検査
染色体の異数性を検査します。年齢が高くなるにつれ受精卵の染色体の数の異常(異数性)が増加します。これがART不成功や流産の増加要因と考えられます。染色体数に異常がない胚を選択して移植する方法です。
私は絨毛染色体検査や末梢血染色体検査の結果より、①に当てはまります。
着床前診断PGT-Aの臨床研究と、その背景
日本で「医療」として受けられる着床前診断は、PGT-MとPGT-SRだけでしたが、2019年12月より、臨床研究としてPGT-Aも実施可能となりました。(日本産婦人科学会で認可された施設のみ)
この臨床研究を始めるにあたって、日本国内で先行研究が行われ、83名の方がPGT-Aを実施した結果、移植当たりの妊娠率が約70%と、明らかに高い結果が得られたことが分かりました。(PGT-A非実施では約30%)
そこで、より多い母数による研究を行い確かめるため、今回の臨床研究へつながったそうです。
このPGT-A臨床研究では、PGT-SRも同時に実施できるとなっていました。
染色体の構造異常を持つ、私のような対象者(末梢血染色体検査の記事をお読みください)は、これまでは2回以上の流産歴を持つ場合に限って、日本産婦人科学会に申請して、疾患としてPGT-SRを実施していました。
ですが、このPGT-A臨床研究下では、流産歴を問わず、PGT-SRを行える(異数性も同時に分かる)となっていました。
PGT-Aとは?PGT-Aで分かることは?
PGT-A (Aneuploidies)の今回の研究では、
胚盤胞から、将来、絨毛膜になる細胞(TE)をとって、DNAを増幅して、次世代シークエンサー(NGS)という機器で解析し、染色体の本数に異常がないかどうかを調べます。
また、PGT-SRに当てはまる、染色体の構造異常も調べることができます。
この絨毛膜になる細胞は、初期胚にはまだないため、胚盤胞を検査対象としているのです。
今回のPGT-Aの臨床研究で分かることは、以下の2つです。
*注意*バランスの取れた異常(均衡型転座保因者など)は検出することができません。
PGT-A臨床研究の参加条件
上の2つは、人数制限があるため、当てはまる方は、急いで遺伝子カウンセリングを受け、日本産科婦人科学会へ申請をする必要がありました。(私が通っている、浅田レディースクリニックの場合)
私は、染色体構造異常に当てはまるため、人数制限はなく、安心しました。
ここに挙げた内容は、浅田レディースクリニックで配布された文書をもとに載せています。着床前診断について、詳しく知りたい方のお役に立てばうれしいです。
着床前診断PGT-Aのメリット・デメリットやスケジュール、私の結果などは、後日アップする記事を参考にしてください。
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