この記事では、染色体の構造異常を持つ当事者として、夫婦の染色体検査の重要性・早期検査の必要性について、まとめてみました。
不妊治療をがんばっている誰かの参考になるとうれしいです。
わたしの染色体構造異常がわかったキッカケ
私は、染色体に構造異常(均衡型転座)を持っています。
それが分かったのは、
二回目の流産手術のときに、絨毛染色体検査を行ったからです。
絨毛体検査の記事はこちらから
この絨毛染色体検査をやる・やらないも、医師によって見解は様々で、
「まだ年齢的にも若い(35歳だったけどね)から、そこまですすめないけどね。」という先生もいれば、
「2回目の流産だし、念のため検査するものアリかもしれません。」とか、
多くの医師は、今回の流産もおそらく染色体の数の異常でしょうという考えでした。
ほとんどの医師が、私たち夫婦に染色体構造異常があることを予想していない印象だったし、結果を報告された時も、私たち以上に、先生も言葉につまっていました。
私たち夫婦の染色体検査の記事はこちらから
均衡型相互転座をもつ人の割合
均衡型相互転座は、400 人に1 人程度に認められ、不育症カップルには5~10%程度の割合で認められます。
決して多い割合ではないけど、無視できる割合でもないと思います。
現に、年齢が若くても、何回妊娠して流産しても、絨毛染色体検査や夫婦の染色体検査を受けない限り、この”均衡型相互転座”という染色体の構造異常は分かりません。
分からない限り、高確率で流産を繰り返してしまう。
妊娠・出産するためには、夫婦の染色体が「正常」か「正常ではない」かで大きく変わります。
治療方法が大きく異なるんです。
均衡型転座が分かってからの不妊治療(染色体検査や臨床研究)への疑問
均衡型転座という染色体構造異常があると、不妊治療の選択肢は、着床前診断一択になります。
染色体異常のない、正常胚を選んで移植するやり方です。
均衡型相互転座と分かった方の、「これまで」と「今」の治療の進み方を比べてみました。
均衡型転座保因者の不妊治療(着床前診断)
<これまで>
2回以上流産歴がある場合のみ ⇒ 日本産科婦人科学会に申請 ⇒ PGT-SR(疾患としての着床前診断)を実施できる
<今(2019年12月より)>
流産歴を問わず、着床前診断PGT-A臨床研究に参加 ⇒ PGT-SR(同時に異数性も分かる=PGT-A)実施できる
*日本産科婦人科学会に認定された施設に限ります。
これまでは、流産を2回以上経験し均衡型転座という結果がある場合でなら、染色体異常という疾患扱いで着床前診断を行うことができました。
ですが、2019年12月から始まった、他(多)施設による着床前診断の臨床研究では、均衡型転座を持つ人は、『流産歴を問わず』この着床前診断(PGT-A、PGT-SR)の研究に参加できるとあります。
ですが!
流産を経験していない方が、夫婦の染色体検査なんてやっているでしょうか?
夫婦のどちらかが均衡型転座保因者であると分かっているでしょうか?
流産経験がなければ、絨毛染色体検査はやる機会がないと思うし。
しかも1回の流産で、夫婦のどちらかに染色体の異常(構造異常)があるなんて考えるでしょうか。
そして1回の流産では、病院・クリニック側も、染色体検査をすすめることは本当にまれです。
もし、勉強熱心な方が染色体構造異常の可能性を考えたとしても、気持ち的にもなかなか検査までたどり着けないのが、現実だと思います。
そうすると、最低でも、採卵は1回、移植は2回以上は経験して、2回目の流産時に絨毛体検査をすすめられ、夫婦の染色体検査へと進むことになると思います。
2019年12月から新体制になって、『流産歴は問わず』なんて甘い言葉がありますが、この染色体検査を初診時に検査必須にしない限り、何も変わらないと思います。
均衡型転座保因者の、着床前診断への道が険しかった訳
2019年12月より、私が通っている浅田レディースクリニック名古屋でも、PGT-A臨床研究が始まり、わたしもそれに参加しています。
私は、2019年12月に絨毛染色体検査を受け、2020年1月に夫婦で染色体検査を受け、結果、わたしの染色体構造異常(均衡型転座)が判明しています。
その後2月にPGT-Aの説明会、3月に遺伝子カウンセリングと、通院しているクリニックでの着床前診断実施の道を順調に歩いてきました。
私の着床前診断の記事はこちらから
私の場合は、タイミングが本当に良かったので、自施設で、特に待つことなく、着床前診断へステップアップできました。
これ以前に転座が分かり、着床前診断希望の方は、神戸のクリニックへ遠方通院という道を選んでいらしゃったと思います。
通える範囲に着床前診断を実施できるクリニックがなく、泣く泣く不妊治療を断念したご夫婦もいらっしゃると思います。
それだけ、日本では着床前診断という治療法がタブー視され、命の選別と色メガネで見られていたんです。
最近では、ようやく国や学会が動き、不妊治療の保険適用化や、不妊治療の助成金の拡充、着床前診断の臨床研究など、前向きな方向に進んでいるような気がします。
でも、それぞれの不妊治療クリニックの間で、技術や診療方針・情報開示の差があったり、治療の選択肢への情報不足、不育症への理解や支援など、改善されたらいいなと思うことがまだまだたくさんあります。
クリニックの医師に、夫婦の染色体検査をなぜ初診時にやらないのか、聞いてみた
先日、診察のときに、「なぜ、初診時に染色体検査をやらないんですか?」と医師に聞いてみました。
それは、染色体検査が非常にプライバシーの高いセンシティブな検査だからです。
安易に検査して、異常が見つかりましたとなった場合、ご夫婦間で問題になることもあります。
そして、以前は着床前診断という治療の選択肢もありませんでした。
ですが今後、着床前診断が一般的になれば、初診で行う検査の一つになることもあるかもしれません。
こんな答えをいただきました。
センシティブな検査、取り扱いが難しい検査ということですよね。異常が見つかった場合は。
でもそれ以上に、不妊の原因が何か、ということが分かる方が重要な気もします。
夫婦で同意して納得していれば、早期に検査できたらいいのにと思いました。
均衡型転座を持つ当事者だからこそ、思うこと
夫婦で染色体構造異常について理解して納得していれば、早期に染色体検査ができたらいいのに、と思います。
もし不妊治療のクリニックに通いはじめたときに、染色体検査ができたのなら。
もし着床前診断が治療法としてもっと確立していれば。
そうしたら、結果流産になる移植を避けられたし、採卵数も必要最低限ですんだかもしれない。
流産なんて3回も経験してないかもしれない。
転座を持つ夫婦なんて、ごくわずかかもしれません。
でも圧倒的に妊娠・出産への大きな大きなハンデなんです。
自分が当事者だったからこそ、染色体構造異常がもっと早く分かっていたら、着床前診断がもっと早く実施できたら、と思わずにいられません。
コメント