着床前診断で『正常胚』と胚を移植した場合に、出産率、流産になる確率、妊娠反応陰性になる確率、それらの原因について考えてみました。
着床前診断とは、以下の文章では、PGT-A、PGT-SRの意味でつかっています。
PGT-A、PGT-SRについてくわしく知りたい方は、こちらをご覧ください。
着床前診断をしない場合の、流産率・妊娠反応陰性について
これは、わたしが、着床前診断の説明会でもらった資料の一部です。
書きこみがあり、見にくくてすみません。
〇は受精卵(胚)を表しており、全部で100個あります。
緑の〇は、染色体が正常だった正倍数性の胚を、
青い〇は、染色体が異数性だった胚を、あらわしています。
これを見ると、正常胚と異数性胚ができる割合や、それぞれの生産率(出産率)・流産率・妊娠反応陰性率などがわかります。
<正常胚と異数性胚ができる、それぞれの割合>
・正常胚ができる確率:44%
・異数性の胚ができる確率:56%
<受精卵全体で見る、生産率・流産率・妊娠反応陰性率>
・生産率(出産率):30%
・流産率:26%
・妊娠反応陰性率:44%
着床前診断をしていない場合は、この染色体の数が異常の胚も、移植している可能性がありますよね。
見た目の評価で染色体異常までは分からないし。
しかし、受精卵100個のうち、異数性の胚が56個もあるんなんて。
半分以上が、流産か妊娠反応陰性になってしまうということ。
正常胚で出産までたどりつく割合は、全体の28%しかないんですね。
そしてこれは、均衡型相互転座などの染色体構造異常なんて持っていない、正常の夫婦どうしの受精卵の話です。
わたしのような転座をもった人は、もっともっとその割合が少ないんだろうな。
着床前診断をせず、移植する場合
・正常胚は44%しかない。
⇒ほとんどが流産か着床しないということ。
・流産率+妊娠反応陰性率=70%にもなる!
着床前診断で正常胚を選んだ場合の、生産率・流産率・妊娠反応陰性率
つぎは、着床前診断を行った場合の、生産率や流産率・妊娠反応陰性率についてみていきます。
これも浅田レディースクリニックさんのPGT-A臨床研究の説明会でもらった資料からです。
この図は、先ほどの異数性胚をのぞいたものです。
PGT-Aをするということは、正常胚(=正倍数性胚)を選んで移植するということになります。
つまり、図の、緑の〇44個のうち、何個が出産までたどりつくか、流産するか、妊娠反応(ー)かを計算すると、こうなります。
<すべて正常胚としたときの、生産率・流産率・妊娠反応陰性率>
・生産率:64%
・流産率:9%
・妊娠反応陰性率:27%
正常胚だけを移植した場合でも、9%の割合で流産し、陰性となる割合も27%もあります。
説明会では、出産までいく割合は60~70%くらいになります、と言われていました。
「ほとんどの方が初回の移植で、妊娠・出産へすすむことができるんです」、と。
でも、30%強の方が、そうならないわけで。
今まで3回も流産しているわたしとしては、その妊娠しない30%に入るんじゃないかと思ってしまいます。
着床前診断で正常胚を選んでも、妊娠しない原因とは何なんだろう。
着床前診断で正常胚を移植しても、妊娠しない理由・流産しない理由とは?
最初にのせた図に、正常胚の流産・妊娠反応陰性がおこる理由について書かれていました。
赤枠で囲ったところです。
正常胚を移植したが、流産や妊反(ー)になってしまった理由としては、これらが考えられるようです。
<正常胚移植後の、流産・妊娠反応(-)の原因として考えられるもの>
・子宮内環境:子宮内の病原菌や子宮内膜炎、子宮の形態(後屈など奇形)
・免疫学的異常:甲状腺ホルモン異常、血液凝固異常、抗リン脂質抗体症候群など
・遺伝子の組み合わせ:染色体は正常だが、遺伝子の組み合わせに異常がある場合
流産や妊娠不成立の原因への対策、どうにもできないこと
対策できること
子宮内環境については、奇形以外は、何らかの治療ができると思います。
今話題になってるEMMA,ALICEなどの検査をやれば、子宮内の細菌のバランスや、病原菌の有無が分かり、慢性子宮内膜炎などもお薬治療で対策できます。
免疫学的異常についてでは、
甲状腺ホルモン(TSH・FT4)は、お薬治療で適正なホルモン値にコントロールできます。
血液凝固異常(=血栓を起こす)の原因因子、プロテインS・プロテインC・血液凝固第Ⅻ因子なども、アスピリンやヘパリンなどのお薬で治療ができます。
抗リン脂質抗体症候群は、自己免疫疾患で、血液が固まりやすく血栓をおこす病気です。これらも、各種抗体検査で検査でき、アスピリンやヘパリンなどのお薬で治療できます。
他にも、免疫異常として、NK細胞やTh1・Th2なども知られていますが、浅田レディースクリニックでは、この因子は妊娠・出産には大きく影響しないと考えているそうです。(医師より)
免疫学的異常は、不育症の原因としても大きくかかわってきます。
PGT-Aを行う前に、今一度やっていない検査はないか、自分がやった方がいい検査はあるか、確認してみるとよいと思います。
自分ではどうにもできないこと
最後に一番ネックな問題、「遺伝子の組み合わせ」です。
PGT-AやPGT-SRなどの着床前診断で分かるのは、染色体の数のバランスです。
過不足なく、それぞれの染色体が長くも短くもなければ、正常となります。
でも染色体の中の遺伝子の異常までは分かりません。
これは染色体と遺伝子の関係をあらわした図です。
ちょっとくわしくなりますが、
細胞の中の核に、染色体はあります。
その染色体の中に、おりたたまれたDNAがあり、それらのDNAのある断片(領域)が遺伝子になります。
なので、染色体よりも遺伝子の方が、もっともっと深い、中身の情報になります。
さすがに着床前診断ではそこまで分からないので、この遺伝子の異常があった場合、流産や妊娠不成立になります。
この遺伝子の組み合わせは、夫婦2人の遺伝子の相性がいいか悪いか、も影響すると言われています。
こればっかりは、もうどうしようもありませんね。
着床前診断後、もし流産や妊娠不成立だった場合、わたしが思うこと
今、わたしはPGT-Aにて、正常胚と判断された胚を移植しています。
これまでの経験から、流産したり妊娠しない場合の、心の準備もある程度できています。
でも、心の準備だけでなく、何が原因で妊娠しないのか、しっかり理解して次への対策もできるようにと、この記事をまとめました。
ですが、今まで述べた割合や、データ、原因や対策については、それぞれの病院やクリニックで異なります。
でも、色んな原因をつぶして、治療と対策をしても、「この遺伝子の組み合わせの問題ですね」なんて言われたら、もうお手上げです。
その正常胚は、遺伝子の異常で妊娠継続できなかったんだとあきらめるしかありません。
やっぱりどんなに検査して万全の体制でのぞんでも、一定数、流産や妊娠できない状態になるそうです。
自然の摂理なんでしょうか。
どんな結果が出たとしても、しっかりうけとめて、また前に進もうと思います。
どなたかの参考になればうれしいです。
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